お知らせ

時の経つのが早い

2026年03月04日

「ついさっきまでお正月だったのに、もう3月か」という会話が聞こえてきます。先日もご門徒さんが「歳をとると時間が経つのが早くて」とおっしゃっていました。逆に子どもには、大人の10倍くらい時間が長く感じられるといいます。この違いはなんでしょうか。

 ある本に「脳に刺激がないと時間が短く感じられる」と書かれていました。子どもにとっては毎日が新しい発見です。それに脳が刺激されているそうです。しかし年を重ねると、目の前の出来事を新鮮に受け取るどころか、過去の経験によって対処することのほうが多くなるそうです。すると、脳が刺激されることなく、時間が短く感じられるというのです。私たちの生活パターンは、ともすると決まってきています。すると「また夫のご飯を作らないといけない」「妻の愚痴を聞かねばならない」「どうせ人生はこいうものだ」と決めつけた人生になってしまうのです。しまいには「生きるのは面倒だ」の繰り返しです。しかし、今ある出来事は当たり前のことでしょうか。当たり前に慣れすぎてはいないでしょうか。かくいう私もぼうっと生きていた時代がありました。

 そんな私に師は国木田独歩の「牛肉と馬鈴薯」を薦めてくれたのです。こんな話です。ある年の冬、明治倶楽部の2階に男が6人集まり、人生について語るというシーンから始まります。ある男が「私には不思議な願い」があるというのです。それは何かと尋ねると「びっくりしたいというのが僕の願いなんです。死の秘密を知りたいという願いではなく、死という事実に驚きたいという願いです!」と話しました。なぜ生死があるのかと理屈で考えるのではなく、今ある「いのちの事実」に感動できる心を持つことこそが、時間を大切に生きるということなのでしょう。

 思いどおりにならないこの人生を、今日もこうして生きている。目の前にこの人がいる。なんでもない、この事実にびっくりできる日々を送りたいものですね。