お知らせ

無量

2023年05月27日

 「あなたは幸せですか?」と聞かれたら、「たいしたことはないけど、あの人と比べたら、まだましな方だから、幸せな方だと思わないとね」などと、どっかの誰かと比べて自分の状態をわかろうとしていませんか。他者と比較して自分を確かめようと、あるいは他者との優劣で自分を確かめようとする心の動きがありませんか。

 世の中には、比べる材料があふれているように見えます。あらゆることが数量化され、すぐ見てわかりやすくされています。人間の評価も、年収や資産、さまざまな力を指標化して数値によるレベル分けが行われます。数値化すると、他との比較や変化を安易に知ることができます。私たちは、点数をもとにした成績、偏差値、評定平均値など、さまざまに数値化されたものを頼りにして見がちです。数字だけで判断するのは他のさまざまな主観が入る説明要素を排除して、すっきりとある意味で公平に客観的に判断できると思わせます。世の中には、他と比較する数値化されたものはたくさんありますが、人間はどんな単位で比べることができるでしょうか。

 「阿弥陀仏」は「無量寿仏」「無量光仏」とも呼ばれます。「無量」とは「はかることができない」ということで「数値化」が意味や価値を持ちません。私たちは、他と比べたり、過去と比べたりして、つい数値化してしまいます。数値化して比べることは、人間の営みにおいては、ごくわずかのことしかありません。そしてその数値は、その人の全ての評価でも価値でもありません。数値が示す事実と結果はきっちり知ってわかった上で、数字や記号では表現できない大事な世界があることをしっかり知らねば、私たちは数値に関心が注がれる社会で、数値化されたものが全てだと思い込んでしまうのではないでしょうか。